大事な選手の体を守るための夏場のトレーニングの留意点

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内科・循環器内科・呼吸器内科・アレルギー科 / 日本内科学会専門医・日本循環器学会専門医
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大事な選手の体を守るための夏場のトレーニングの留意点

時に死に至る熱中症はしっかりとした予防を

スポーツをしていて夏場に起きやすい症例というと、代表的なのは、やはり「熱中症」だと思います。では、熱中症はなぜ起きるのでしょう。運動時の体温維持は、運動による筋肉の産熱と発汗などによる放熱のバランスの上に成り立っています。しかし、気温が高い、湿度が高い、風が弱い、日差しが強いといった暑熱環境下では、体が十分に対応できない場合があります。そのような体温維持機構の破綻が熱中症なのです。

熱中症による死亡は、頭部・脊椎外傷に次いで多いスポーツ中の死亡原因です。スポーツ以外でのケースも含めた統計では、1968年から2003年までの36年間で、4630件のし亡霊があり、最近の数年間では毎年200人前後の方が熱中症で亡くなられています。また、学校管理下における運動部活動では75年から01年までの間に116人が死亡。種目別に見ると、これは部員数にも関係するかもしれませんが、野球がダントツに多く33名、以下、ラグビー14名、サッカーと剣道が11名と続いています。また、同時期の学年別発生傾向では、高校1年、2年に多く、さらに、月別では梅雨が明けて急激に気温が上がり、かつ湿度も高い7月の下旬頃に最も多く発生しています。

熱中症は、場合によっては死に至る深刻な急性スポーツ障害ですが、予防可能なスポーツ障害でもあるのです。そこでまず行なってほしいのが、運動環境・暑熱環境を把握すること。冒頭でも触れましたが、熱中症は気温の高さだけが原因になるのではありません。たとえ気温はそれほど高くなくても、風通しの悪い体育館といった室内でも起きるのです。ですから、気温(乾球温度)のみならず、湿度・輻射熱を合わせたWBGT(湿球黒球温度)で、その日のコンディションを把握する必要があります。今は安価でハンディーなWBGT計が購入できますから、それを指標に練習メニューを組み立てるようにするといいでしょう。

次に、こまめな水分・塩分の補給です。汗によってかなりの塩分が失われていますから、真水だけを飲むのではなく、水1リットルに対して2グラムの食塩を入れたもの、あるいはスポーツドリンクを飲むようにしてください。日本の夏の暑熱環境を考えると、30分ごとの補給が望ましく、その際は日陰で休憩もとるようにしましょう。以前とは違って、いまはどの学校も自由に水が飲めるようですが、それから一歩進んで強制的に水分・塩分をとらせるようにして欲しいと思います。

ウェアに留意するのも、一つの予防です。野球は帽子をかぶるので直射日光は防いでくれるものの、アンダーソックスを履いてストッキングを、アンダーシャツを着てからユニフォームを、というように、夏場でも身に着けるものが多いスポーツです。近ごろこそ、速乾性があって軽いものも増えましたが、それでも他競技に比べると放熱しにくいウエアでプレーしていると言えますし、ベルトやボタンなどで体が締めつけられてもいます。防具を着けている捕手は、なおさらです。野球が、サッカーやラグビーといった炎天下でも走り回る競技より、熱中症から死に至るケースが多い理由の一つが、これだと考えられます。

日本の夏の暑熱環境は、スポーツをするにはとても厳しいものがあります。練習をするときはきちんとユニフォームを着て……という指導方針もあるかもしれませんが、こと夏場に限っては、通気性のあるTシャツなどを着用し、なおかつ、こまめに着替えるようにした方がいいと思います。

予防にはもう一つ、暑熱順化という方法があります。例えば、梅雨が明け、高湿度に加えて急激に気温が上昇した場合、あるいは、試験休み明けや合宿初日。こうしたケースは暑熱環境に適応しにくく、熱中症になりやすいので、いきなり激しい練習をするのではなく、少しずつ体を慣らしていくようにします。また、暑熱環境もさることながら、環境が変わると熱中症になりやすい。高校1年と2年、とりわけ新入部員に多く発生するのはこのためです。ですから、指導者はこうしたことも踏まえておいてほしいと思います。

熱中症は大きく、(1)熱けいれん、(2)熱失神、(3)熱疲労、(4)熱射病と4つに分類されています。(1)は大量の発汗によって塩分が失われた際、水分のみの補給によって血液中のナトリウム濃度が低下し、これによって筋肉がふるえてしまう病態。熱けいれんというと、全身けいれんを想起しやすいですが、実際は有痛性筋けいれんで、食塩水かスポーツドリンクの補給で対処できます。(2)の熱失神は、放熱機構の働きによる血管拡張と発汗による脱水が相まって、血圧低下・失神に至ります。この場合は風通しのいい涼しいところに移動し、スポーツドリンクを十分に与えるようにします。

(1)と(2)が進行した状態が(3)の熱疲労で、全身けん怠感、脱力感、めまい、吐き気、おう吐などを起こします。その際、必ずしも顕著な体温上昇を伴うわけではありません。これは「疲労」という日本語訳がなされているので、けいれんや失神より大したことがないようにも聞こえますが、実際は疲労困ぱいという状態です。このときは、(2)と同様の処置を施すのに加えて、下肢を挙上するようにしますが、意識がはっきりしない場合は迷わず医療機関に行ってください。

そして、最重症型が(4)の熱射病。体温調節機構が完全に破たんし、高体温と、意識障害(もうろう状態からこん睡までさまざま)が特徴です。血液凝固異常、脳、肝臓、腎臓、心肺などの全身の多臓器障害を合併し、死亡率が高いので、39~40度の高体温、血圧低下、ショック、意識障害があれば、熱射病の可能性が極めて高いと考えるべきです。そして、すぐに涼しい場所に移動。全身を冷却(わきの下、そけい部に氷のうを当てる、水を全身に噴霧し風であおいで気化熱で冷却するなど)し、水分補給が可能であれば補給し、直ちに救急車を要請するようにしなければなりません。

熱中症は急性障害なので、いつ、だれでも起こり得るものです。ですから、指導者はまず、毎日の暑熱環境を把握した上で、熱中症の予防に努めてほしいと思います。そして、もし熱中症になった場合は、どの段階か見極め、適切な処置を施してください。

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